朝、何度起こしても起きられない。午前中はつらそうなのに、夕方になると元気になる。お子さまのそんな様子に「怠けているのではないか」と戸惑ってしまう保護者さまは少なくありません。実は、思春期のお子さまに多い起立性調節障害は、気持ちの問題ではなく、血圧や心拍を調整する自律神経がうまく働かなくなる身体の病気です。治し方の中心は医療機関での診断と治療ですが、水分や塩分のとり方、起き上がり方の工夫など、家庭でできるサポートも学会の解説で示されています。
本記事では、日本小児心身医学会の一般向け解説に沿って、起立性調節障害の基礎知識・セルフチェック・受診の目安・家庭でできるサポート・親の関わり方までを順番に整理します。中高生のお子さまを持つ保護者さまが「今日から何をすればよいか」を持ち帰れるようにまとめました。記事の最後にはよくある質問も掲載しています。
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起立性調節障害とは?「怠け」ではなく自律神経の病気です
起立性調節障害という名前は知っていても、体の中で何が起きているのかを知る機会は意外と少ないものです。まずは、回復への取り組みの前提となる基礎知識を整理します。
立ち上がるときに体の中で起きていること
日本小児心身医学会は、起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)を「立ち上がった時に頭痛、めまい、倦怠感などの症状がでる病気で、血圧や心拍数など循環器系の自律神経の調節に不調をきたすことが原因になります」と説明しています(出典:日本小児心身医学会「起立性調節障害」)。
立ち上がると、血液は重力で下半身の側へ移動します。健康な状態では自律神経がこの変動をすばやく打ち消し、脳への血流を保ちます。同学会は、起立に伴う循環の変動に対して自律神経の調節がうまく働かなくなることを、この病気の成り立ちのひとつに挙げています(出典同上)。つまり、本人のやる気や性格の問題ではなく、体の調節機能の問題です。思春期に発症しやすく、午前に症状が強いため学校生活に支障をきたしやすいことも、同学会が指摘するとおりです(出典同上)。
新起立試験で分かる4つのサブタイプ
起立性調節障害はひとくくりの病気ではなく、いくつかのタイプに分かれます。医療機関では「新起立試験」という検査を行い、次の4つのサブタイプを判定します(出典同上)。
- 起立直後性低血圧(INOH)
- 体位性頻脈症候群(POTS)
- 血管迷走神経性失神(VVS)
- 遷延性起立性低血圧(DeOH)
どのタイプかによって対応も変わるため、タイプ判定を含めた診断を医療機関で受けることが、回復への出発点になります。
中学生の約10%に見られる、めずらしくない病気です
同学会によると、起立性調節障害の有病率は軽症例も含めて中学生の約10%にのぼり、不登校のお子さまの約3〜4割に併存するとされています(出典同上)。決してめずらしい病気ではありません。
一方で同学会は、家族の多くがこの症状を精神的なもの・気持ちの問題・怠けととらえがちで、それが子どもの心理的ストレスとなり、自律神経を介して症状をさらに悪化させてしまうと注意を促しています(出典同上)。だからこそ、身体の病気であると正しく理解することが、回復を支える最初の一歩になります。
起立性調節障害セルフチェック|中学生に多いサイン
受診を迷っている保護者さまに向けて、学会の診断で使われる症状の項目をチェックリスト形式でご紹介します。あくまで受診のきっかけをつかむための目安であり、診断そのものは医療機関で行われます。
学会の診断でも使われる11の症状チェック
日本小児心身医学会が挙げる症状の項目は、次の11個です(出典:日本小児心身医学会「起立性調節障害」)。
- 立ちくらみ
- 失神(気を失う)
- 気分不良
- 朝の起床困難(朝起きられない)
- 頭痛
- 腹痛
- 動悸
- 午前中に調子が悪く、午後に回復する
- 食欲不振
- 車酔い
- 顔色が悪い
このうち3つ以上当てはまる場合、または2つでも症状が強い場合に、起立性調節障害が疑われるとされています(出典同上)。
午前に悪化して午後に回復する、という特徴
同学会の解説では、症状は午前に強く午後に軽減する傾向があり、立ったり座ったりすると強まり、横になると軽くなります。雨の前など気圧の変化の影響も受けやすく、夜は目がさえて眠れず、悪化すると昼夜逆転の生活になることもあります(出典同上)。
「夕方には元気になる」という姿は、仮病や甘えの証拠に見えてしまいがちですが、実際にはこの病気の性質そのものです。なお、立ちくらみやめまいが長く続いている場合は、めまいと自律神経の関係を解説した記事もあわせてお読みください。
当てはまったら、責めずに次の一歩へ
チェックに多く当てはまったとしても、この場で病気と決まるわけではありません。大切なのは、お子さまを責めないこと、そして様子見のまま長引かせずに医療機関へ相談することです。次の章で、受診の目安と診断の流れを整理します。
医療機関の受診目安と診断の流れ
起立性調節障害への取り組みは、正しい診断から始まります。私たち札幌はるかぜ治療院も、施術より先に、まず医療機関の受診をおすすめする立場です。
まずは小児科・かかりつけ医に相談を
中高生のお子さまの場合、最初の相談先は小児科やかかりつけ医が基本です。特に次のような状態が続いているなら、受診を検討してください。
- 朝起きられない日が続き、遅刻や欠席が増えている
- 立ちくらみや失神、強い頭痛・腹痛を繰り返している
- 睡眠のリズムが崩れ、昼夜逆転になりつつある
なお、保護者さまご自身も不調を抱えていて受診先に迷っている場合は、自律神経失調症は何科を受診すればよいかを解説した記事を参考にしてください。
診断の流れ:似た病気を除外してからタイプを判定します
日本小児心身医学会の解説によると、診断ではまず、鉄欠乏性貧血・心疾患・てんかんなどの神経疾患・甲状腺などの内分泌疾患といった、似た症状を起こす基礎疾患がないかを確認します。そのうえで新起立試験でサブタイプを判定し、検査結果と日常生活の状況の両面から重症度を評価します(出典:日本小児心身医学会「起立性調節障害」)。
裏を返せば、朝起きられない背景に別の病気が隠れていないかを確認できるのは、検査と診断ができる医療機関だけです。インターネットの情報だけで判断してしまわないことが大切です。
治療の全体像:生活の工夫が土台、薬は補助
同学会は治療として、疾病教育(病気の正しい理解)・非薬物療法(日常生活の工夫)・学校との連携・薬物療法・環境調整・心理療法を、重症度に応じて組み合わせるとしています。薬物療法は非薬物療法を行ったうえで用いるもので、薬だけでは効果が不十分ともされています(出典同上。同学会編「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」に基づく解説)。
つまり、家庭での生活の工夫は治療の脇役ではなく土台です。次の章で、その具体策を見ていきましょう。
家庭でできる治し方サポート|学会が示す生活の工夫

ここからは、日本小児心身医学会が非薬物療法(日常生活上の工夫)として挙げている内容を、家庭で実践しやすい形に整理してお伝えします(出典:日本小児心身医学会「起立性調節障害」)。取り組みやすいものから、医療機関の指導とあわせて続けてみてください。
水分は1日1.5〜2リットル、塩分は普段の食事に+3g
同学会は、水分摂取は1日1.5〜2リットル、塩分摂取は普段の食事+3gを目安にすることを勧めています(出典同上)。水分の摂取不足は、この病気の成り立ちに関わる要因のひとつにも挙げられています(出典同上)。
朝起きたらまずコップ1杯、登校前・帰宅後・入浴後にもう1杯と、生活の節目に組み込むと続けやすくなります。ただし、持病があるお子さまの場合は、水分や塩分の量について主治医に確認してください。
起き上がり方・立ち上がり方の工夫
同学会が勧める立ち上がり方は、頭を下げながらゆっくり立つことです。あわせて、静止した状態で1〜2分以上立ち続けないこと、短時間の起立でも足をクロスさせることも挙げられています(出典同上)。
朝も同じ考え方で、目が覚めたらすぐに立ち上がるのではなく、布団の上で体を起こしてから、頭を下げたままゆっくり立ち上がる、という順番を親子で習慣にしてみてください。朝礼など立ちっぱなしになる場面が学校にある場合は、後述する学校との連携もあわせて検討しましょう。
毎日30分程度の歩行で「動ける体」を保つ
同学会は、毎日30分程度の歩行で筋力低下を防ぐことも勧めています(出典同上)。背景には、活動量が減ると筋力が落ちて自律神経の働きも悪くなり、下半身に血液がたまりやすくなって症状がさらに強まる、という悪循環があるとされています(出典同上)。
激しい運動である必要はありません。症状が午前に強いという特徴を踏まえると、比較的調子の出やすい午後や夕方に、散歩や買い物への同行など、無理のない形で歩く時間をつくるのが現実的です。
生活リズムと朝の光。夜のスマートフォンは控えめに
同学会は、早寝早起きなど規則正しい生活リズムも勧めています(出典同上)。とはいえ、この病気では夜に目がさえて眠れなくなりやすいため、「早く寝なさい」と言うだけではうまくいきません。
そこで役立つのが光の使い方です。厚生労働省e-ヘルスネットは「朝の強い光は体内時計を早める方向に、夜の光はこれを遅らせる方向に働きます」と解説しています(出典:厚生労働省e-ヘルスネット「体内時計」)。朝はカーテンを開けて部屋に光を入れ、夜はスマートフォンなど画面の光を控えめにする。こうした環境づくりなら、無理に叩き起こさなくても、体内時計を整える助けになります。生活リズムの整え方の全体像は自律神経の乱れの治し方で、眠れない悩みへの向き合い方は不眠と自律神経の関係で詳しく解説しています。
親がやってはいけないこと・声かけのポイント
家庭でのサポートでは、具体策と同じくらい、保護者さまの受け止め方と声かけが大切です。よかれと思った一言が、回復を遠ざけてしまうことがあります。
「気合で起きなさい」が逆効果になる理由
日本小児心身医学会は、家族の多くが症状を気持ちの問題や怠けととらえてしまい、それが子どもの心理的ストレスとなって、自律神経を介して症状を悪化させると指摘しています(出典:日本小児心身医学会「起立性調節障害」)。体がつらいのに登校しなければならないという圧迫感から症状が悪化する例も、同学会の解説で挙げられています(出典同上)。
つまり「気合が足りない」「頑張れば起きられる」という声かけは、励ましのつもりでも、病気の仕組みのうえでは症状を強める方向に働きかねません。本人がいちばん、起きたいのに起きられないことに苦しんでいる。この前提に立つことが出発点です。
回復を支える声かけ・関わり方
同学会は、身体の病気であることを親子に丁寧に説明することで、親子とも不安を軽減できるとしています。また、本人のつらさや学業への焦りに耳を傾けて受け止めることが「理解してもらえた」という安心感につながる、ともされています(出典同上)。ご家庭では、次のような関わりを意識してみてください。
- 「怠けではなく体の病気」という前提を、家族全員で共有する
- 起きられた日や外に出られた日など、小さな変化を言葉にして認める
- 症状のつらさや勉強の焦りについて、否定せずに最後まで話を聞く
学校との連携も、回復を支える一部です
同学会は、学校関係者に病気への理解を深めてもらい、受け入れ態勢を整えることも治療の一環に挙げています。学会からは『起立性調節障害~クラスメートに知ってほしいこと~』という学校向けの資料も公開されています(出典同上)。
診断を受けたら、担任の先生や養護教諭に病状を共有し、遅刻しての登校や保健室の利用など、体調に合った過ごし方を相談してみてください。具体的な進め方は、主治医と学校の双方に相談しながら決めていくと安心です。
治療院でできること|医療と併用する選択肢

ここまで、医療機関と家庭でできることを中心にお伝えしてきました。最後に、私たち札幌はるかぜ治療院のような治療院に何ができて、何ができないのかを、正直にお伝えします。
当院の考え方:医療の代わりではなく、併用するサポートです
前提として、起立性調節障害の診断と治療は医療機関で行うものです。整体などの施術がこの病気そのものを改善するという科学的根拠は現時点で確立されておらず、日本小児心身医学会も2018年に、整体・整骨などの代替療法について注意を促す声明を出しています(出典:日本小児心身医学会「起立性調節障害(OD)に対する整骨や整体などの代替療法の効果についての声明」)。
だからこそ当院は、「施術で起立性調節障害が治る」といった説明はいたしません。当院で行うのは、症状や通院状況を伺い、資格の範囲内で施術や生活上の助言を行うことです。医療の代わりではなく、併用する選択肢という位置づけでご検討ください。
初回の20〜30分は、症状だけでなく生活背景も伺います
2026年5月の院長取材で、尾池は初回の20〜30分ほどを対話に使い、症状の経過だけでなく、これまでの病気、生活リズム、家族との関わり、普段の過ごし方や趣味まで伺うと話しています。起立性調節障害については診断と治療を医療機関が担うため、当院では主治医の説明と日常生活で困っていることを整理し、対応できる範囲を説明します。
そのうえで、姿勢や体の動かし方などを確認します。当院では診断や投薬、服薬の変更は行いません。症状の変化や未受診の症状がある場合は、医療機関への相談を優先します。
施術を行う場合は、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格に基づいて対応します。施術の詳しい流れは自律神経失調症の治し方の記事で解説しています。尾池院長が目標にしているのは、通い続けること自体ではなく、必要な支援が減り、ご本人が日常を過ごせる「卒業」です。これは回復を保証するものではなく、施術による反応や経過には個人差があります。通い方はお子さまの体調と通院状況を確認しながら相談します。
院内情報の出典:尾池院長への取材(2026年5月)
完全予約制・個室で相談できます
当院は完全予約制・個室で、院長が初回から継続まで担当します。中高生のお子さまには、保護者さまの同伴をお願いしています。
お子さまを連れて行く前に、まず保護者さまだけで状況を相談したい場合は、LINEからメッセージをお送りください。電話受付は9時から23時までです。
起立性調節障害に関するよくある質問
最後に、起立性調節障害について保護者さまからよくいただく質問にお答えします。
Q. 起立性調節障害はどのくらいで良くなりますか?
日本小児心身医学会の解説では、日常生活に支障のない軽症例は適切な治療により2〜3ヵ月で改善し、学校を長期欠席する重症例では社会復帰に2〜3年以上を要するとされています(出典:日本小児心身医学会「起立性調節障害」)。経過には個人差が大きいため、目先の登校日数に一喜一憂せず、医療機関と相談しながら長い目で見守ることが大切です。
Q. 学校は休ませたほうがよいのでしょうか?
一律の正解はありません。ただ、体がつらいのに登校しなければならないという圧迫感が症状を悪化させる例は、学会の解説でも挙げられています(出典同上)。無理に行かせるか終日休ませるかの二択ではなく、遅刻しての登校や保健室の利用も含めて、主治医と学校に相談しながらお子さまの体調に合う形を探すことをおすすめします。
Q. 親ができることで、いちばん大切なことは何ですか?
「怠けではなく身体の病気」という理解を、家族で共有することです。学会も、病気を正しく知ること(疾病教育)を治療の柱の最初に挙げています(出典同上)。そのうえで、水分と塩分・立ち上がり方・軽い歩行・生活リズムといった家庭の工夫を、できる範囲で続けてみてください。
Q. 治療院の施術だけで良くなりますか?
いいえ。起立性調節障害の診断と治療は医療機関で行うものであり、当院の施術は医療の代わりにはなりません。医療機関での治療と家庭でのサポートを土台に、姿勢や体の緊張といった身体面を整える併用の選択肢として、当院をご活用ください。
Q. 札幌で起立性調節障害について相談できる場所を探しています。
まずは小児科など医療機関への相談が第一歩です。そのうえで、体の面からのサポートをお探しでしたら、私たち札幌はるかぜ治療院にご相談ください。札幌市北区・地下鉄南北線「北24条」駅から徒歩1分、完全個室・予約制です(札幌の自律神経専門院のご案内)。保護者さまだけの事前のご相談も、LINEで受け付けています。
まとめ|「怠けではない」と知ることが、回復への第一歩
起立性調節障害は、中学生の約10%に見られる、自律神経の調節がうまく働かなくなる身体の病気です。回復の柱は、医療機関での診断と治療を土台に、水分と塩分・起き上がり方・軽い歩行・生活リズムといった家庭の工夫と、学校との連携を組み合わせていくことです。
そして何より、「怠けではない」と保護者さまが理解していることが、お子さまの安心につながります。医療・家庭・学校、そして必要に応じて体の面を支える治療院と、頼れる先を組み合わせながら、焦らず回復を支えていきましょう。私たちも、その一員としてお手伝いします。
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おかげさまで多くのご予約をいただいており、施術中はお電話に出られないことがございます。お手数ですが、その際は次のいずれかでご連絡ください。
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【院内情報の取材協力】自律神経専門 札幌はるかぜ治療院
院長:尾池直紀。あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・理学療法士の資格を保有しています。
※本記事の内容は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾患の診断や治療を行うものではありません。
※施術の効果や経過には個人差があります。症状や経過によっては医療機関の受診をおすすめする場合があります。
※当院は医療機関ではありません。あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうの施術を提供しており、診断や投薬は行いません。

